クルーズ船でやってくる中国人観光客

こんにちは。

朝夕はめっきり涼しくなって、ようやく寝付きやすい環境になって来ました。ここ五家荘では。都市部ではどうでしょうか?

さて、今回は今までのガイドの内容とは違って、いわゆるインバウンドの話をしたいと思います。

目次

中国人観光客の訪日事情

これまでの状況

私が暮らす熊本にも、かなりの数のクルーズ船が来港して外国人観光客を見かける機会が格段に増えてきました。まあ、昨年の熊本大地震以前でも熊本城や阿蘇では多くの中国人観光客を見かけましたし、繁華街の下通りではいわゆる爆買いをする光景も目にしました。

たとえば、ドラッグストアで風邪薬や目薬をガバっと大量に買い物かごに入れ、2万円弱分購入していたのが印象的でした。果たして、購入したものが何なのか分かっていたのかどうか…。

昨年から本格的に始まった八代港へのクルーズ船来港で、観光バスに乗った中国人観光客が大挙して観光地を訪れるのを見る機会が増えてきました。もちろん、このクルーズには韓国・東南アジア各国・西洋の乗客もいて、それぞれに熊本での観光をしているようです。その中に、私を見つけて連絡を取り、ガイドとして雇ってくれる人もいるわけです。ちなみに、中国人から直接連絡を受けた経験は未だありません。(旅行会社を通じて、この秋にガイドをすることにはなっていますが)

八代港へのクルーズの来港

今年は合計60~70隻のクルーズ船が八代港に停泊することが予想されており、大部分のツアーがキャンセルされることなく順調に催行されているようです。八代港は熊本県内では唯一このような大型客船を受け入れることの出来る港です。熊本県貿易総額の45%を担うなど、物流の拠点として重要港湾の指定を受けています。また、増大するクルーズ船の寄港に対して熊本県の支援の下、更なる整備が予定されているとのことです。

ただし、地震以前のように阿蘇山上を観光する姿は、クルーズ船でやってくる観光客に限ってはほとんど見かけません。滞在時間が限られており、立ち寄る時間がないためだと見られます。なので、熊本城周辺や水前寺成趣園に集中しているようです。クルーズ船の寄港は早いもので主に午前7:00からですが、そこから入国管理の手続きで乗客が船を下りるまでには40分~1時間ほどかかります。

主要なクルーズ船の乗客数は3,000~4,000あるので、これらがすべて大型バスに搭乗するとして必要な台数は100~130台に上ります。これらのバスがすべて出発してしまうまでは2~3時間もかかってしまいます。初動の早いバスに乗る方々はゆっくりと観光が出来ますが、出発の遅いバスに乗る方々は、各所で滞在時間が取れず弾丸ツアーになってしまうことでしょう。

乗客に加えて、船の運行や条約へのサービスを提供する乗組員が1,100名ほどいるとのことです。これは莫大な運営費が掛かる悪寒。

中国人観光客が行う“ツアー”とは

クルーズに掛かる費用

このような大型客船でのクルーズは、3泊4日から5泊6日の旅として設定してあることが多く、その料金は1泊1万円から設定されています。十分な寝室に、船内レストランで毎食が用意されているばかりでなく様々なアトラクションが無料で提供されています。1泊1万円/人という料金設定なのに、至れり尽くせりです。もちろん、いくつかは高額の対価を払って受けるサービスとのことです。実際にクルーズ船に乗ったことがないので、すべて伝聞ですが。

この価格設定でも運営会社が利益を出せるのは、もちろん根拠があります。この低価格のツアーに参加する旅客は、中国の旅行会社が手配する大型バスに乗って決まったルートで観光する必要があります。そして、その大型バスのルートには必ず中国人資本によって経営される、日本製の電化製品・美容品・健康食品・時計・装飾品が販売されている店舗が入っています。

八代港への到着が早朝だった場合には、まず熊本市内での観光(熊本城・水前寺成趣園)を済ませてから、こういった“専用店舗”へと連行されて買い物をする機会を強制的に与えられます。もちろん、乗客にとって買い物をするのは義務ではありません。あくまで、立ち寄るのが義務なだけです。こういった場所は、把握しているだけで3宇土・松橋・八代の3か所存在しています。

“爆買い”の遷移

以前はよく報じられた“爆買い”は、現在では中国当局による関税率の増によってかなり落ち着いたとの見方がありますが、じつはこれらの店舗内ではまだ存在しています。店舗内では“日本製”の表示がなされた日本製とみられる製品が陳列され、中国人観光客の購買意欲を煽っています。一説によると、中国人は自国内での“日本製”を信用しておらず(中国では偽物が多く流通しているのが一因)、日本国内で販売される“日本製”こそが本物の日本製製品という信仰にも似た考えがあるためです。Made in Japan は、高性能製品のシンボルとして中国人にも高い評価を得ているようです。

観光をしない観光バス

クルーズ船の中には、港への到着時間が午後になるものもあります。たとえば午後2時に来港した場合、入国管理に40分から1時間かかるとして、最初のバスが出発できるのが早くても午後2時45分になります。順調にバスが出て行き、16時過ぎになって港を出発したバスがあったので、追跡してみました。

国道方面へ向かうので、てっきり高速道路で熊本へ向かうと思いきや、そのまま国道を北上。途中でコンビニに立ち寄り、トイレ休憩と簡単な食品・飲料を購入していたようです。バスはそのまま国道を北上し、宇土で左折して県道を南下。そしてその目標は松橋にある「中国資本によって経営される買い物専用店舗」だったのです。

ここは以前は地元のスーパーマーケットだったのですが、何らかの理由によって閉店してしまい、それからしばらくして中国資本によってこのような形態で開店した模様です。

ここは基本的に日本人は立ち入り禁止になっており、入り口ではセキュリティのチェックが行われていました。ま、そこをやり過ごして潜入。中は各所に監視カメラが設置されており、「撮影禁止」の貼り紙が見られました。どうやら情報を持ちかえられたり日本人によるスパイ行為を警戒しているようです。さすがにこの状況ではびびってしまい写真を撮ることは出来ませんでしたw

店内に潜入

店内には家電・美容品がまず入り口付近に配置され、押しかけた観光客が列をなしており、その手には買い物かごいっぱいの商品と何枚もの一万円札が握られていました。これは、中国人による福沢諭吉の認知度が爆上がるだろう…、という感慨はもちろんなくw、中国人の購買力とそれを自在に操る中国人ビジネスメンの手腕に脱帽しました。

早く出発して観光に入って来たであろうバスと、遅れてクルーズ船から直接やって来たバスが続々と駐車場に入ってきて店内に観光?客が入ってくるにつれて、他の客に先に取られまいとする感情のせいか、どんどんと買い物かごに商品を入れる人の割合が高まってきたように見られました。初期は、まだあまり買い物熱が高まってなかったのか買い物かごが空のまま店内を見て回る人が多かったのですが、時間が経つにつれ上記のような状況に変化していきました。

店内はまさにアニメのサザエさんで見られた「バーゲンセールでの取り合い」に近い状況が繰り広げられていたのです。

需要が需要を呼び経済の好循環を招くという、かつての日本で見られた光景がここに繰り広げられているとは。ちなみに、見る限りは熊本の特産品はあまり芳しくない売れ行きでした。

夜になっても、さらにバスが駐車場になだれ込んでいました。店内も引き続き好調な販売が続いていたことでしょう。さすがは日本製品。安定の信頼度で中国人バカ売れです。しかし忘れてはならないのが、この店舗は中国資本によって経営されていること。そしてその店舗では現金商売でした。

最近の中国といえば、銀聯カードやスマートフォンでの決済が主流になってきていると報じられているのは皆さんもご存じでしょうが、ここではそれが見られませんでした。現金商売の利点といえば、、、?税金ですね。

また、これまでに判明している事実として、これらのバスの中では中国人ガイドがこの買い物専門店の商品説明を行ない、購買意欲を煽っているようです。それだけなら普通ですが、その説明が事実を誇張した、もしくは嘘の内容であると言われており、その模様はNHKや民放各局によっても複数回報じられています。

また、これらのガイドは買い物専用店舗などから仲介手数料を受け取り、それを収入としているということが言われています。ネット上での話ですが、一本のツアー(7日から10日)での手取りは100万円になることもあるとか。

まとめ

ということで、クルーズ船で来熊(らいゆう=熊本に来る)する中国人観光客の動向は中国資本によってコントロールされていることが明らかになりました。まあ、これがすべてではありませんが、その傾向が非常に強いと言えるでしょう。

この追跡の前に地元旅行会社の方とお話をする機会がありました。日本の大手旅行会社でもクルーズに食い込んで自社の観光商品を売ることが難しく、それが地場の旅行会社となると現状では全くその機会を得る気配すらないとのこと。

外国の旅行会社によって観光客のルートを限定され、日本の旅行会社が外国人観光客の日本での観光ルートを管理できないということは、観光客による消費の恩恵を受けられないということです。

文章が長くなってしまったのでまとめると、中国人が日本を舞台に中国人観光客を相手に荒稼ぎをしている。というのが現状の“中国人観光客の訪日”だと言えます。日本に落ちるべき果実が落ちていない。これには、日本側の対応の遅さも問題だとは思いますが。

これらに対応するためには、中国人観光客に楽しんでもらって喜んで対価を払ってもらえるような商品の開発、そしてそれを潜在的な観光客に発信して到達させるための方策、中国の旅行会社ではなく日本の旅行会社を通して旅行・体験の手配が出来るように、日本の会社による努力に加えて行政による規制緩和・規制強化などの支援が必要だと強く思います。

ただし、日本の観光行政にそれが出来るとは到底思えません。彼らが目指しているのは「2020年までに年間訪日観光客4,000万人の達成」であるため、その質や内容に関して興味があるようには見えないのです。

中国人がどんどん進出して思うさま好きな形態で商売を始めるその一方で、日本人による新規ビジネスの開始については厳しく規制するその姿勢を、早く見直してもらいたいものです。

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