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9/7規制緩和下での訪日旅行

先日発表され、9/7から施行される新たな “緩和された入国規制” ですが、各方面からの評価は大分厳しいものです。当たり前ですたいね。

– 3回以上のワクチン接種証明
– 旅行業者によって航空券・宿泊が手配されていること
– ビザ
– 旅行を手配する業者への旅程の提出
– 手配業者による旅行者の管理

個人的には、この緩和によってドイツの旅行会社経由の仕事は確保されました。更に現在手配を進めている国内業者からの依頼も遂行可能になると思います。

というわけで、多少の収入が生まれそうでなんとか生存が可能になる見込み。しかしやはり個人客が自由に訪日出来ないことには “繁忙期” にはなり得ない。

日本の旅行業界全体としてみれば、このタイミングで個人客の入国自由化へと動いていなければ、秋の観光需要に間に合わないわけで。10月になってから「11/1から緩和しますよ、どうぞ来てください」と言っても世界の潜在的な観光客は既に他の国・場所に行くことを決めてしまったあと。

ということは、すでに秋の大きな需要を取り逃してしまったわけです。冬はスキーなどを除いて元々大きな需要があるわけではないので、来年春まで旅行業界は利益を得られない。

今まで2年半もの間、ろくな収入もなくやってきた日本の旅行業界。初期は給付金や貸付金があったためなんとかやってきたところも、今やそれらもない上に売上もないのでは体力が持つはずがありません。霞を食おうにも、どうやらそれすら生えとらん。この秋は正に生命線だったはずです。

9/3現在で日本円は米ドルに対して24年ぶりの水準となる140.21円を付けました(瞬間的には140.8円まで下落)。ユーロは139.59円(最安で140.7円)と、ドル円とユーロ円の価格が逆転するほどドル高が進行しています。

更にシンガポールドルも100円、豪ドルも95円と世界中の主要通貨が軒並み日本円に対して高値を付けている状況。

これは資源輸入国である日本全体にとっては世界的な物価高を更に後押しするマイナス要因なのですが、インバウンドにとってはこれ以上ないプラス要因です。航空運賃は高騰していっていますが、これを打ち消すほどの為替水準。

2019年比で27%(110円:140円)の割引がなされている状況。更に海外の多くの国では賃金上昇を含む経済成長とインフレが進んでいるので、日本の物価は外国人から見てものすごく下落しているわけです。

仮にホテル料金に10%の値上げがなされていたとしても、欧米から見れば2019年より安くなったと感じてしまう水準。これは欧米に限らず東南アジアから見てもそうなっていると思います。

外国人観光客が日本での観光のために日本円への両替を行なえば、円安に歯止めを掛ける効果も期待できます。今年5月のニュースで「円が1ドル140円を下回るようなことがあれば、日本政府は1,000億ドル(14兆円)を投じて為替介入をする可能性がある」(バンクオブアメリカによる分析)と報じられましたが、そのようなバクチを打たなくて済むかもしれません。イングランド銀行を打ち負かしたジョージ・ソロスのような投機家が現れないとも限らんしね。

そして日本で使われたカネは宿泊施設で使われ、宿泊施設は食材などの仕入れ先に支払います。仕入れ先の生産者は出荷に要する経費を支払います。それは例えば段ボールだったり肥料だったり。

客室の維持や改修が必要になれば関連業者に依頼してカネを支払います。もっと多くの入込のために広告宣伝を行うでしょう。広告代理店だけではなくIT関連業者もその恩恵を受けます。

こうやって観光で消費されたカネは色んな分野に波及して潤していく効果があります。単にホテルが、小売店が儲かるというだけの話ではないのです。人々の暮らしに好影響を与えます。

この好機を逃す手はないのですが、日本政府は未だにコロナ前への規制緩和に動けません。恐らくこれを逃しきった後に手遅れの規制緩和を自信満々に行なうでしょうが、その頃にはもしかしたら世界的な景気後退・不況が訪れているかもしれません。

先日、アメリカ FRB (中央銀行)パウェル議長は「家計や企業に痛みを与えてでもインフレを退治する」と強い姿勢を打ち出しました。これから不況が訪れる可能性はかなり高まってきています。(とはいっても中間選挙を控えているのであまりにも性急で極端な利上げはなされないだろう、という観測も根強い)

まあ、この男が昨年のうちに「インフレは一過性のもの」などと固執せずに早めの対策を打ち出していれば、現在ほどの物価高はなかったかもしれないですが…

余談ですが、この男は昨年のうちに保有する株式を売却してしまっているので無傷。アメリカは割とインサイダー取引が横行してます。先日話題になったナンシー・ペロシもインサイダー取引で悪名高い。

アメリカが風邪を引けば世界各国も同様に風邪を引きます。世界が不況に陥ったら、旅行に費やされるカネは真っ先に削られるでしょう。その時を待って日本政府は規制緩和をするつもりでしょうか?仕事がなくなり、自分のクビの心配をしなければいけない時に富裕層以外に誰が旅行をしようと思うでしょうか?

政治にしろ企業の事業にしろ、いや個人の生活にしろ、事前に計画を立てて先の見通しをつけておくものです。また、他人の計画を自らの計画に組み込んでいきます。

日本の政治は全くそれが見られず、国の政策を決断してそれに責任を持とうという意思が全く見られない。政治家として最も基本的で最も重要な要素を放棄している。

世界の多くの国では、特に先進国では、とっくの昔にコロナ禍を政治的に終わらせています。感染者はまだまだ多く出ていますが、人々は最早気にすることなく多くの場面でマスクを外して生活をし、コンサートのような密集する状況でも大声を上げて楽しんでいます。

YouTube で検索すれば、あちこちでロックフェスティバルが開催されて聴衆が2019年以前と何ら変わらぬ方法で楽しんでいるのがいくらでも確認できます。

しかしその後に彼らは「感染が拡大した!重症者が!死者が!病床使用率が!」などとは言っていません。

現在のオミクロン株は最早2020年のような脅威ではなく、日常生活に戻るには十分弱毒化されているという判断がなされている。社会生活の制限は大多数の人々にとってただの大きなマイナスである、という考えが主流になっています。

中国で施行されているゼロコロナ政策なぞ、アホの極みですよ。毛沢東が行った自国民大虐殺の文化大革命と何も変わらん。権力者の闘争に人民が超大規模に巻き込まれただけ。今回も習近平の権力維持のために多くの人が巻き込まれています。

第一、世界中に新型コロナウイルスが蔓延しているのに中国だけひと時の楽園を築いてどうなるもんか?世界との交流が再開したとたんにウイルスを保持した人たちによって感染が拡大するだけです。その時免疫を獲得していない中国国民は…

そんな中で未だに色んな制限を敷いている国があったら世界からどう見られるでしょうか?

21世紀の今でも科学的な根拠に基づいた判断が出来ない、感情に基づいた国の運営がなされている、とみられておかしくはないでしょう。

日本での観光を考えていた人たちのいくらかはそれを諦めてほかの国へと振り替えるでしょう。そしてもう日本へは戻ってこないかもしれない。規制が長引くほどにその数は増加するのは明らかです。

観光客の誘致は世界各国で見られ、これは国際競争であることを忘れてはなりません。よそに取られればそれだけ日本の利益は少なくなります。黙っていても儲かるわけではないということ。

今でも十二分に遅すぎるほど遅いですが、手を打つなら今しかない。日本はバブル崩壊後、小出し対策を繰り返すのみで根本的な治療を施せずに不況を脱せなかったどころか現在にまで至る衰退の原因を作り出してしまった。

そのような状況がまた訪れていると言えます。